慣れないスピーチを頼まれたとします。
結婚式の祝辞だったり、送別会のスピーチだったり。
多くの人がやるのが、事前に「スピーチ原稿」を書き、これを丸暗記して本番に臨もうとすることでしょう。
頼まれたスピーチが5分なのか10分なのかで、話す分量も変わりますから、あらかじめ原稿を書き、それを何度も読んで時間の長さを測ることは、もちろん役に立ちます。
ただし、ここにひとつ落とし穴があるのです。
すなわち、あらかじめスピーチ原稿を用意すると、「書いたように話す」あるいは「書いた通りに話す」スピーチになってしまう、ということです。
しかも、原稿を見ないでスピーチする場合は、「書いた通りに間違いなく読めるか」が最重要事項となってしまい、聞き手のことを忘れてしまいがちです。
ましてや、用意した原稿の細かい語句を忘れてしまったり、順番を間違えたり、飛ばしたりすると、そのことで頭がいっぱいになり、ますます聞き手の存在を忘れてしまいます。
しかし、聞き手は元の原稿を読んでいるわけではないので、暗記した通りに話しているかなど、そもそも、わかりようもチェックのしようもないわけです。
ですので、もし許されるなら、話の流れの順に「重要なキーワード」だけメモしておいて、時々それに目をやりながら話すことをお勧めします。
メモを手元に持つことが許されない場合も、この「キーワード・メモ」を作っておくことは、とても役立ちます。
これを僕は、「尾根道を明確にする」と表現しています。山に上るときは、一歩一歩正確に歩くことより、尾根道のコースを正しく把握して、コースを外れないことがいちばん重要ですよね。
読むときも話の流れを外さない「尾根道読書」、書くときも流れの大枠を外さない「尾根道執筆」、そして話すときも脱線防止の「尾根道スピーチ」。
僕はなぜか、この尾根道という言葉が好きです。
今日の教訓:話すように書け。書いたように話すな。
今日の教訓:尾根道を外すな!