「かぜ」の語源

「かぜ」の語源

ふだん当たり前に思っていて、なかなか気づかないことがあります。
たとえば、漢字の「音読み」と「訓読み」です。
例として「風」という字を考えてみましょう。音読みは「ふう」、訓読みは「かぜ」。こんなことは小学生でも知っていますよね。
たしかにそうなのですが、「風」を「かぜ」と読むというのは、ちょっと順序が違うと思うのです。
中国から「風」という漢字が入って来るはるか前から、「かぜ」という大和言葉はありました。そこに「風」という漢字が移入され、古来から使われてきた「かぜ」という読みをあてがった、というのが物の順序です。
となると、「かぜ」という大和言葉は、どのようにして成立したのかが気になってきます。
『やまとことばの美しい語源』(武光誠著)という本を見ると、「かぜ」の語源は「気馳せ」なのだそうです。つまり、「気(エネルギー)」が空中を馳せるのが「かぜ」ということなのですね。なんと科学的な、そしてファンタジックな語源なのでしょう。
いま出てきた「気」という言葉がからむ、別の例をご紹介しましょう。
それは、「かける(駆ける、翔ける)」という言葉の語源です。同書によると、これは「「風切る」を短くして「かける」としてできた言葉だというのです。
つまり、「気が馳せる」その通り道を「切りながら進む」のが「駆ける・翔ける」の語源だというのですね。特に「翔ける」の場合は、「天翔ける」のように空中のエネルギーをかき分けて飛ぶというイメージがしっくりきます。
いすれにしても、「かぜ」は「気馳せ」から来ているという話に、私の胸は高鳴りました。日本語(大和言葉)で素敵じゃありませんか!

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