スポーツとひらめき

前回、パズルでのひらめきの例をあげましたが、「生身の体を伴う想像力」がひらめきを誘引した例が実際にスポーツの世界にあります。

ひとつは、走り高跳び。
1968年まで走り高跳びの跳び方は、腹を下にする「ダイブ」と両足でバーをはさむようにして跳ぶ「はさみ跳び」しかありませんでした。
しかし、アメリカのディック・フォスベリーは高校時代から背面跳びの手法を編み出し、密かに記録を伸ばしていきました。当時、彼の背面跳びは人々の物笑いの種だったと記録されています。
しかし、やがて彼は全米代表となり、メキシコ・オリンピックに出場して世界新記録で金メダルに輝いたのです。

これとよく似た例がウィンタースポーツにもあります。
ある時、スキーのジャンプ競技に参加していたスウェーデンのヤン・ボークレブは、強風のためスキーが大きく開いたままで着地地点まで飛んでしまいました。
この無様なジャンプは減点の対象になりましたが、なぜか飛距離だけは伸びたのです。
この偶然の出来事からスキーの開脚飛びが発見され、今ではすべての選手が当然のようにV字ジャンプを行なっています。

このように、最初は「それはないだろう」というアイディアが、その世界を席巻してしまうことはままあることなのです。
スポーツの世界でも、アイデアが大きな力を発揮する場合があるのです。

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